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申告、納付及び還付等

㈠ 非居住者及び法人の納税義務・源 泉徴収

3   申告、納付及び還付等

⑴ 申告、納付及び還付

① 改正前の制度の概要

 非居住者が、国内源泉所得のうち総合課税 に係る所得税の対象となるものを有する場合 には、わが国に対し申告をして、所得税を納 付し、又は所得税の還付を受けることになり ます。この場合の申告、納付及び還付の根拠 は、居住者の各年分の所得に対する所得税に ついての申告、納付及び還付の規定(所得税 法第 2 編第 5 章。以下「居住者に係る申告等 の規定」といいます。)を準用することとし ており、これを根拠として申告等の手続を行 うこととされています。

 居住者に係る申告等の規定を準用する場合 に、非居住者に特有の事情がある部分につい ては、居住者に係る申告等の規定を読み替え て、その調整を図っています(所法166)。

 また、非居住者の帳簿書類については、旧 所得税法施行規則第67条において準用する同 規則第55条から第63条までの規定により、青 色申告の承認を受けている非居住者は、一定 の帳簿書類を備え付け、これにその取引を記 録し、かつ、その帳簿書類を保存しなければ ならないこととされています。

② 改正の内容

 具体的な非居住者の帳簿書類については、

内部取引を恒久的施設帰属所得に係る所得の 金額の計算上認識することとされたことに伴 い、帳簿書類への記録の対象となる取引につ

き、恒久的施設を有する非居住者については 内部取引を含めることとされました(所規67 による読替後の所規57)。

 また、恒久的施設帰属所得に係る所得の金 額の計算上認識することとされた内部取引は、

私法上の取引ではなく、契約書等の証憑類が 当然には存在しないため、恒久的施設を有す る非居住者については、その内部取引につい て、証憑類に相当する書類を作成することが 義務付けられました(所規68の 3 )。

 そこで、作成が義務付けられた内部取引に 係る証憑類についても青色申告の承認を受け た非居住者が保存する帳簿書類に加えること とされました(所規67による読替後の所規63

①三)。

③ 適用関係

イ 上記②の改正のうち、所得税法施行規則 第67条の改正は、平成29年 1 月 1 日から施 行されます(改正所規附則 1 四)。

ロ 上記②の改正のうち、所得税法施行規則 第68条の 3 の改正は、平成29年分以後の所 得税について適用されます(平成26年改正 法附則14)。

⑵ 恒久的施設に係る取引に係る文書化

① 改正前の制度の概要

 恒久的施設帰属所得は、恒久的施設が果た す機能等を勘案して恒久的施設に帰せられる 所得とされています(所法161①一)。非居住 者が外部の者と行った取引が恒久的施設に帰 せられるかどうかの判定や、恒久的施設と事 業場等との間の内部取引の認識については、

恒久的施設の果たす機能や事実関係の分析を 行うことが必要となります。この機能・事実 分析を行うために必要なものとして、恒久的 施設の果たす機能や、内部取引の認識のもと になる内部のモノやお金の動きについて、書 類を作成しなければならないこととされてい ます。

イ 恒久的施設帰属外部取引に関する事項

 恒久的施設を有する非居住者は、恒久的 施設帰属所得を有する場合において、その 非居住者が他の者との間で行った取引のう ち、恒久的施設帰属所得に係る各種所得の 金額の計算上、その取引から生じる所得が 恒久的施設に帰せられるものについては、

一定の事項を記載した書類を作成しなけれ ばならないこととされています(所法166 の 2 ①)。

ロ 内部取引に関する事項

 恒久的施設を有する非居住者は、恒久的 施設帰属所得を有する場合において、その 非居住者の事業場等と恒久的施設の間の資 産の移転等が内部取引に該当する場合には、

一定の事項を記載した書類を作成しなけれ ばならないこととされています(所法166 の 2 ②)。

② 改正の内容

 恒久的施設に係る取引について、具体的に 作成が必要となる書類が次のとおり定められ ました。

イ 恒久的施設帰属外部取引に関する事項

(所規68の 2 )

イ 恒久的施設帰属外部取引の内容を記載 した書類

 具体的には、恒久的施設帰属外部取引 がどのような取引であるかを説明する書 類であり、恒久的施設帰属外部取引が第 三者との取引であることから、私法上の 要請により契約書等が存在するため、契 約書等に記載された内容を整理すれば足 りるものと考えられます。

ロ 恒久的施設及び事業場等が恒久的施設 帰属外部取引において使用した資産の明 細並びに恒久的施設帰属外部取引に係る 負債の明細

 具体的には、恒久的施設及び事業場等 が恒久的施設帰属外部取引に関して使用 した資産(無形資産を含みます。)の種 類、内容、契約条件等が分かる書類及び

恒久的施設帰属外部取引に関連した負債 の種類や内容等が分かる書類です。

 なお、無形資産については、恒久的施 設帰属外部取引に関して重要な価値を有 し所得の源泉となると認められるものも 含まれます。

ハ 非居住者の恒久的施設及び事業場等が 果たす機能(リスクの引受け及び管理に 関する人的機能、資産の帰属に係る人的 機能その他の機能をいいます。)並びに その機能に関連するリスクに係る事項を 記載した書類

 具体的には、恒久的施設及び事業場等 がどのような機能を果たしているのか、

どのようなリスクを負っているのかを説 明するための書類です。

 機能の整理に当たっては個人の事業活 動において、恒久的施設及び事業場等の 機能がどこで、どのように果たされてい るかの整理が必要となります。

 また、AOAにおいては、リスクは機 能に従うこととなるため、機能が属する 部門に付随するものとして整理すること が必要です。

ニ 非居住者の恒久的施設及び事業場等が 恒久的施設帰属外部取引において果たし た機能に関連する部門並びに当該部門の 業務の内容を記載した書類

 具体的には、資産やリスクの帰属、そ の結果としての取引の帰属において、ど のような人的機能が遂行されたかが殊更 に重要であることから、恒久的施設及び 事業場等が外部取引において果たした機 能に関連する企業内部における部門やそ の部門の業務内容等を説明するための書 類です。

 どのような部門においてどれほどの人 員を配置し、それらの人員がどのような 業務を行っているかを具体的に整理する 必要があります。

ロ 内部取引に関する事項(所規68の 3 ) イ 非居住者の恒久的施設と事業場等との

間の内部取引に係る注文書、送り状、領 収書、見積書その他これらに準ずる書類 若しくはこれらに相当する書類又はその 写し

 具体的には、恒久的施設及び事業場等 との間で内部取引を認識している場合に、

それがどのような取引であるのかを説明 する書類です。

 内部取引は、私法上の取引ではないこ とから、契約書等は当然には作成されて いないため、契約書類似の書類を作成し、

その記載内容については、第三者間で取 引を行う場合、通常、記載される又は取 り極められる取引条件、取引内容等につ いて明示されていることが必要となりま す。

ロ 非居住者の恒久的施設及び事業場等が 内部取引において使用した資産の明細並 びに内部取引に係る負債の明細を記載し た書類

 具体的には、外部取引の場合と同様に、

恒久的施設及び事業場等が内部取引に関 して使用した資産(無形資産を含みま す。)の種類、内容、契約条件等が分か る書類及び恒久的施設帰属外部取引に関 連した負債の種類や内容等が分かる書類 です。

ハ 非居住者の恒久的施設及び事業場等が 果たす機能(リスクの引受け及び管理に 関する人的機能、資産の帰属に係る人的 機能その他の機能をいいます。)並びに 当該機能に関連するリスクに係る事項を 記載した書類

 具体的内容は、外部取引の場合と同様 です。

ニ 恒久的施設及び事業場等が内部取引に おいて果たした機能に関連する部門並び にその部門の業務の内容を記載した書類

ホ その他当該内部取引に関連する事実

(資産の移転、役務の提供その他内部取 引に関連して生じた事実をいいます。)

が生じたことを証する書類

 恒久的施設及び事業場等との間での認 識された内部取引に関連して発生する事 実を証明する書類です。

 例えば、内部取引により資産の移転が 生じた場合に、当該移転に伴い第三者と の間で行われた契約書等の写しや当該内 部取引により移転された資産を外部に販 売するための移送や加工等がなされた場 合、当該移送や加工等の事実を証する書 類がこれに該当することとなります。

 なお、内部取引に関する事項について、

上記イの書類については、青色申告及び白 色申告の帳簿書類の保存の対象となります

(所法166、232)。

③ 適用関係

 上記②の改正は、非居住者の平成29年分以 後の所得税について適用されます(平成26年 改正法附則14)。